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名古屋高等裁判所 昭和40年(ネ)48号 判決 1966年12月26日

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴代理人は、「原判決を取り消す、被控訴人は控訴人に対し、別紙目録記載の物件につきなされた名古屋法務局高師出張所昭和二九年二月二六日受付第六〇二号根抵当権設定登記の抹消登記手続をなせ。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人は主文と同旨の判決を求めた。

当事者双方の事実上の陳述、立証関係は、次に付加するほかは、原判決事実摘示のとおりであるから、これを引用する。

控訴代理人は、本件根抵当権は被担保債権および取引関係が消滅し、その存在の根拠を失つて消滅したものである。抵当権の放棄は設定者に対する意思表示によつて効力を生ずるものと解すべく、仮りに然らずとするも、本件根抵当権解除は、第三者たる控訴人のためにする訴外江商株式会社、同市田道太郎間の契約であるから、受益者たる控訴人が反対の意思表示をしない限り、控訴人に対する関係においても有効である。なお、本件における被控訴人の行動からして本件根抵当権の譲渡ならびにその旨の登記は権利の濫用としてみるべく、原判決は取り消さるべきものであると述べた。

被控訴人は右主張を争つた。

証拠(省略)

理由

当審において、控訴代理人の新たに主張、立証するところを勘案してなした当裁判所の判断は次に付加するほかは原判決理由記載のとおりであるから、右原判決の記載を引用する。

当審における証人森下憲三、市田道太郎、福井太一の証言、控訴本人の供述中右判断にそわない部分は信用できず、他に右判断を左右するに足りる信用すべき証拠はない。

控訴代理人の当審における主張も、結局、被担保債権の全部消滅は認められず、しかも根抵当権消滅の登記なき間に根抵当権あるものとして新たな権利関係に入つた被控訴人には、控訴人は対抗できないのであるから、採用できず権利濫用の抗弁もこれを採用するに由なく、本訴請求の失当であることは明白である。

よつて、原判決を相当として、本件控訴を棄却すべく、民事訴訟法第八九条を適用し、主文のとおり判決する。

別紙

目録

豊橋市鍵田町二九番の一、四六番

家屋番号同町第二番の二

(イ) 一、木造瓦葺平屋建事務所休憩所

床面積 五五・三七平方メートル(一六坪七合五勺)

(ロ) 一、木造瓦葺平屋建居宅

床面積 二四・七九平方メートル(七坪五合)

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